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著者:伊波リンダ
出版:赤々舎
発売日:2026年6月
仕様:A4変型判 144ページ
伊波リンダ、初写真集
何かものを配置して構成するように撮影することと、現場に立って撮影すること、
その両方が自分にとっては必要で、戦争とは正反対のことをしたかった。
(あとがきより)
『Design of Okinawa』は、沖縄を記録する写真集ではない。私たちは沖縄をどのように見ているのか、その「見る」という行為そのものを問い直し、再設計する写真集である。
伊波リンダにとって「Design of Okinawa」というタイトルは、単に沖縄の色や形、図像的な特徴を意味するものではない。それは、「デザインされている沖縄」と「沖縄のデザイン」という二つの意味を重ね合わせ、形態や構成だけではなく、その背景にある歴史、権力、記憶、人々の関係性までも含み込む言葉である。
沖縄系移民をルーツに持ち、幼少期から米軍基地の、内と外を行き来しながら育った伊波は、沖縄で起こり続ける出来事を前に、どこで区切りをつけ、どのように語るべきかを問い続けてきた。本書には、基地の内部で撮影した風景、沖縄の日常、そしてコラージュ作品《Sleep in Contradiction(矛盾の中で眠る)》のシリーズが収められている。自身が親しんでいたアメリカの音楽雑誌を砂に埋めて撮影したこれらの作品は、日常のなかで無意識に受け入れていたイメージを解体し、沖縄の風景のなかに置き直すことで、新たな意味を立ち上がらせる試みでもある。
基地の内側と外側、沖縄とアメリカ、自然と人工、記録と構成。それらを単純な対立として境界を固定する視点で描くのではなく、イメージを往還させながら、それぞれの境界がいかに作られ、揺らぎ、反転し得るのかを静かに問いかけていく。
伊波は、「境界線ではない沖縄の線を、自分は軸としていたい」と記している。その言葉のとおり、本書は分断を可視化するためではなく、その境界のあいだに存在する複雑な現実を見つめ続けるための写真集である。
ページをめくるごとにイメージ同士が響き合い、沖縄を見る方法そのものが更新されていく。
『Design of Okinawa』は、写真集というメディアだからこそ実現できる思考の空間を生み出し、沖縄という固有の場所から、境界、記憶、アイデンティティをめぐる普遍的な問いを世界へ投げかけている。
“「デザイン」という言葉は極めて人工的に響くが、デザインされた風景がこちらに浸潤してきたときに、それは新たな「地」となる。もう一度思い起こそう。われわれはどのような現実にも慣れてしまうのである。「デザイン」といってしまうことは、「自然」を引き剥がす、つまりは抵抗の所作でもあるのだ。(中略)
「図」と「地」がもたらす権力を牽制し、どちらが優位であるかということを敢えて括弧に括り、ともに観ようとするハイブリッドなまなざしは、ますます分断が極まるこの現在において、ひとつの処方箋ともいえないか。伊波の眼を借りて、いまある現実を観てみよう。そのときようやく、総体としての「デザイン」がみえてくるはずである。重要なことは、それを自明視してはいけないという、強靭なまなざしである。こうした営為は、眼を取り戻す自治の所作にもみえるし、「どちらにも観ることができる」というところから語るという、切実で個人的インディビジュアルなまなざしでもあるだろう。”
亀海 史明(沖縄県立博物館・美術館 主任学芸員)
本書寄稿『沖縄に見える「図」と「地」 ——ハイブリッドなまなざしについて』より