new
著者:田中雄二
出版:DU BOOKS
発売日:2020年12月11日
仕様:A5判 376ページ
808、909、606、707 そして Roland、もしもこれらによって奏でる音がなかったとしたら、僕の音楽人生もなかったと断言できる。――石野卓球(電気グルーヴ)
TBSラジオ「アフター6ジャンクション」(2021.5.27放送)菊本忠男氏出演でも話題!
1980年に発売された 日本製リズムマシン「TR-808」(通称:ヤオヤ)。
販売期間3年間でわずか1万2000台しか売れなかった装置は、後に海を渡り、80年代末に花咲くクラブシーン隆盛の中で、リバイバル評価を受ける。後続の「TR-909」、ベースライン用シーケンサー「TB-303」など、発売された姉妹機も、 楽器がジャンルそのものを生みだしていくきっかけとなった。
「TR-808」はエレクトロ、マイアミ・ベース、
「TB-303」はアシッド・ハウス、テクノ、
「TR-909」はハウス、ヒップホップ、ガバ、
発売元は大阪で創業した楽器メーカー、ローランド。
創業者の梯(かけはし)郁太郎は、たった一代で日本第2位の電子楽器メーカーに成長させた。今や世界の共通言語となった通信規格「MIDI」も梯が発案したもの。「MIDI」は、その後のDTM(Desk Top Music)、通信カラオケ、初音ミクブームなどを支える基礎技術となっていく。2013年にはこの発明による音楽業界の貢献を讃えられ、日本人個人として初めて、アメリカ最大の音楽祭、グラミー賞テクニカルアワード賞を受賞。
じつは、これらの発明は、基本的に1人のプロジェクト・リーダーから産まれた。
グラミー賞受賞時の梯のインタビューで、最大の功労者として名前を挙げられていたローランド大阪技術センター部長(当時)、菊本忠男である。「ミスター・キクモト」として海外では知られ、トリビュート盤も出る存在だが、これまで公式に雑誌インタビューを受けることがなかった。海外で制作されたドキュメンタリー『808』にも登場していない氏が、初めて「TR-808」「TB-303」「TR-909」の開発秘話を本格的に明かす。
本書は、累計1万3000部をセールスした、日本の電子音楽史を初めて綴った通史『電子音楽 in JAPAN』の20年ぶりの続編的歴史書でもある。日本のトップブランド、ローランド開発者、菊本忠男との対話形式で、前著の後の歴史である80年代末~今世紀までの、サンプリング、デジタル・シンセサイザー、ソフトウエア・シンセの歴史を集大成した。
<目次>
1 コンピュータ時代のあけぼの
2 ローランド誕生。 菊本入社前夜
3 菊本、 ローランドに入社
4 「Dr. Rhythm DR-55」完成とP8設立
5 メイキング・オブ「TR-808」
6 「TR-606」、 「TB-303」、 「MC-202」誕生秘話
7 「TR-909」はなぜアナログ方式を採用したのか
8 ヤマハ「DX7」の衝撃と新たなる挑戦
9 MIDIの誕生
10 基礎技術開発室設立と〝SA音源〟
11 LA音源の開発。 「D-50」の誕生
12 DTMの発明
13 GS対XG対GMのフォーマット戦争と「通信カラオケ」
14 ネットで世界を音楽で結ぶ技術者の夢
15 「M1」とワークステーションの登場
16 テクノ、 ハウス、 マイアミ・ベースと〝ミッドゼロ〟
17 「ヴァリフレーズ」の誕生
18 「COSM」と〝感性モデリング〟
19 ローランド社長就任と降板
20 退職後、 静岡大学へ
21 ソフトウエア・シンセサイザー「RC-808」
22 「サイレント・ストリート・ミュージック」は音楽で人をつなぐ
巻末付録:音盤(メディア)で辿る日本の電子楽器史
参考資料一覧
INDEX
菊本忠男(きくもと・ただお)
日本最初期のトランジスタ技術者の一人。41年大阪府生まれ、77年にローランドに入社し、プロジェクト「P8」セクションのリーダーとして「TR-808」、「TR-909」、「TB-303」などの代表機種を開発。世界的通信規格「MIDI」制定にも関わる。後に基礎技術開発室に移り、エルトン・ジョンが激賞した電子ピアノ「RD-1000」のSA音源、「D-50」のLA音源、COSMパラダイムによる「V-Guitar」から「V-Piano」までのVシリーズの開発に関わる。代表取締役社長を経て、現在はロボット工学、DSP研究者。